トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
その間も、私は一切手を止めることなく次の評価へと進む

「C(循環)評価します」

両側の橈骨動脈に触れる

「左右の脈拍に明らかな左右差があります。左が著しく微弱です。皮膚は冷たく、毛細血管再充満時間も大幅に延長しています」

解離が血管の枝に及び、血流の不均衡が起きている明らかな循環不全

私は救急隊員へ声を掛ける

「末梢ルートは?」

「ルート確保を試みていますが、血管が虚脱していてまだ取れていません!」

「私がやります」

患者の右前腕を選ぶ

血圧低下により、血管は細く縮こまって完全に沈み込んでいた

現場の限られたスペース、緊迫した最悪の条件下

それでも、私の意識は一点に集中する

深呼吸を一つ。迷いなく針を進める

フラッシュバック——逆血を確認

「ルート、入りました」

手早く固定し、確保に成功する

「血圧コントロールのため、収縮期血圧をターゲットに降圧薬の微調整と、適切な輸液を開始します」

医師の指示に従い、すぐに薬剤の投与を開始

さらに、不測の事態に備えて反対側にも二本目の太いルートを迅速に作り上げた

志田先生が私を見る

「さすがだな、一ノ瀬」

その言葉に返事をする心の余裕はなかった

次は、解離がどこまで進展しているか、全身の神経所見と虚血の兆候を素早く観察する

頭部、頸部、体幹、そして四肢の冷感

左足の動脈の触知が触れにくい

解離の末梢への進行を疑う所見だ

「先生、左下肢の冷感が強く、大腿動脈の拍動も弱いです。下肢虚血の可能性があります」

志田先生は深く頷く

「脳血流や内臓血流への進展も一刻を争うな。すぐに心臓血管外科へダイレクトコールを入れて、ヘリ機内から手術室の待機を要請する」

「はい」

患者の血圧は、薬剤によって84/50付近で厳密にコントロールされている

綱渡りのようなショック状態は、今も続いている

救急隊員が声を上げる

「ドクターヘリへの収容準備、完了しました!」

現場全体が一気に動き出す。ストレッチャーの移動

モニターの固定。輸液ラインの絡まりを確認

私は移動の最中も、患者の手を握り続けた

意識が遠のきかけている彼の、瞼がわずかに動く

「聞こえますか? もうすぐ、24時間いつでも手術ができる大きな病院へヘリコプターで行きますからね」

震えるような浅い呼吸

それでも、彼は確かに今、生きようと戦っている

だから、私たちが諦めるわけにはいかないのだ

「大丈夫です」

患者の目を真っ直ぐ見つめる

「私たちが、ずっとついていますから」

その瞬間、患者の指先が、かすかに私の手を握り返したような気がした

私は小さく息を吐く

——絶対に、この命をあちら側へ行かせはしない

その強い誓いを胸に、救出された患者とともに、次の戦場である大空の搬送へと向かった
< 21 / 249 >

この作品をシェア

pagetop