お酒のせいにできない
遼の声が耳に響き、胸に何かを押し付けられた。受け取ると、感触からして自分のバッグと遼のハンカチだった。
そうだ。自分は居酒屋でお酒を飲んでいた。酩酊するほどではないが、確かに飲んでいた。お酒に酔っていたから馬鹿な真似をしてしまい、酔っていたから遼に流されてしまったのだ。
そう思いたいのに、濡れている髪や服が、遼に冷たいドリンクをかけられ確実に酔いが醒めた事実を証明していた。お酒を言い訳にできそうにない。都合の良い言い訳すら思いつかない。
「家まで送るよ」
何と答えればいいのか分からず沈黙してしまう結菜の返事を、マイペースに事を進める遼は少しも待たなかった。求めてすらいなかった。
頭がまだ正常に機能していない。歯車が軋み、思考が一歩も二歩も遅れてしまう。先を行く遼に追いつこうとするが、頬を柔らかく包み込んだ遼の熱い手が結菜の進行を難なく阻止した。
遼にとって都合の悪い選択肢を結菜から消し去るように、飽きもせずに遼は唇を奪う。遼の指と唇の感触を、快楽を得られるものとして覚えてしまった身体が結菜を壊す。口をこじ開け舌を差し込まれ、浮上しかけていた理性を叩き落とされる。
指先とキスで結菜を支配する遼が、結菜の濡れそぼった髪を指で梳いた。気持ちよくなってしまいそうなほどに優しい手つき。結菜にドリンクをかけたことを、遼は悪いとは思っていないようで。罪悪感のざの字も見当たらなかった。
結菜の髪からするりと指を離した遼が後部座席を降り、運転席に乗り込んだ。エンジンがかかる。結菜は無意識に遼のハンカチを握り締める。
「シートベルト、締めてね」
自分のペースを崩さない遼の言葉に、結菜は操られたかの如くシートベルトを締めていた。策士的に結菜を堕としたように見える遼に、手のひらの上で転がされている気がした。
ゆっくりとアクセルが踏み込まれ、道路に出る。結菜の家のある方向へと車は進む。結菜は遼に執拗に嬲られた唇を引き結んだ。遼の運転は丁寧で余裕があり、彼が正気であるのを示すには十分だった。遼はお酒を飲んでいない。彼の全ての言動を、お酒のせいにはできなかった。
END
そうだ。自分は居酒屋でお酒を飲んでいた。酩酊するほどではないが、確かに飲んでいた。お酒に酔っていたから馬鹿な真似をしてしまい、酔っていたから遼に流されてしまったのだ。
そう思いたいのに、濡れている髪や服が、遼に冷たいドリンクをかけられ確実に酔いが醒めた事実を証明していた。お酒を言い訳にできそうにない。都合の良い言い訳すら思いつかない。
「家まで送るよ」
何と答えればいいのか分からず沈黙してしまう結菜の返事を、マイペースに事を進める遼は少しも待たなかった。求めてすらいなかった。
頭がまだ正常に機能していない。歯車が軋み、思考が一歩も二歩も遅れてしまう。先を行く遼に追いつこうとするが、頬を柔らかく包み込んだ遼の熱い手が結菜の進行を難なく阻止した。
遼にとって都合の悪い選択肢を結菜から消し去るように、飽きもせずに遼は唇を奪う。遼の指と唇の感触を、快楽を得られるものとして覚えてしまった身体が結菜を壊す。口をこじ開け舌を差し込まれ、浮上しかけていた理性を叩き落とされる。
指先とキスで結菜を支配する遼が、結菜の濡れそぼった髪を指で梳いた。気持ちよくなってしまいそうなほどに優しい手つき。結菜にドリンクをかけたことを、遼は悪いとは思っていないようで。罪悪感のざの字も見当たらなかった。
結菜の髪からするりと指を離した遼が後部座席を降り、運転席に乗り込んだ。エンジンがかかる。結菜は無意識に遼のハンカチを握り締める。
「シートベルト、締めてね」
自分のペースを崩さない遼の言葉に、結菜は操られたかの如くシートベルトを締めていた。策士的に結菜を堕としたように見える遼に、手のひらの上で転がされている気がした。
ゆっくりとアクセルが踏み込まれ、道路に出る。結菜の家のある方向へと車は進む。結菜は遼に執拗に嬲られた唇を引き結んだ。遼の運転は丁寧で余裕があり、彼が正気であるのを示すには十分だった。遼はお酒を飲んでいない。彼の全ての言動を、お酒のせいにはできなかった。
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