別れてくれない?浮気性彼氏くん。
「「乃慧」」


母の甲高い声と、父の怒りが混じった声で、目を覚ます。


「っ、あ……すみませんっ、私…!」


「乃慧っ!!」


ガッ!と音を立てて閉まりかけていたドアを鷲掴みにして開けたのは、姉、星埜(ほしの) 紅映(くれは)


力が人並じゃなく、大人でも容易に背負投げしてしまうほど。


でも、そうとは思えないほど病弱で、私が生まれる前は入院していた時期もあったらしい。


「紅映、今は入ってきちゃだめ。乃慧がまだ寝て…」


「嘘つかないで母さん!起きてるじゃん!」


「く、紅映っ…すまん母さんが。あとでケーキ買ってやるから、乃慧のことは一旦…」


どうせ、みんな私より自分の欲求を優先する。いや、というよりしてきたから。


姉さんも同じ人間。


絶対そうするだろう。


「うるさい!ケーキなんてっ……いらない―――!!!!」


姉さんが父に瞬く間に目の前にいて、腕を掴む。


「こんのクソジジイが!乃慧を苦しめるなんて…私が、絶対許さないッ!!!」


すると、父の体が宙に舞った。


その少しあと、部屋中に、ドンッ!という重い音が響き渡る。


「……っ、く、れ…はっ…お、俺が悪かっ…た……」


流石の父も、意識を吹っ飛ばす。


姉さんの背負投げ、凄まじい威力なり。


今も病気を背負っているとは信じられない。


「く、くれ…はっ…お願い、やめ、やめてぇぇぇっ!!」


母の情けない命乞いも姉さんには馬耳東風で、容赦なく母を投げ飛ばした。
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