お別れしたはずなのに、トラウマCEOの淫らな求愛にカラダから蕩かされています⁉︎
 聞き慣れた声に振り向くと、黒の上品なイブニングドレス姿の里子が手を振って近づいてきた。
 手にはグラスを持っていて、すっかりウェルカムドリンクを楽しんでいるようだった。


「里子、早かったね!」

「まあね――そんなことより」


 彼女はにやりと意味深な笑みを浮かべ、ぐっと顔を寄せてくる。


「つい今しがた、門のところで車から降りたの見たけど~?」


 すでにここに到着していた彼女は、庭園の一角の木々の隙間から、私がはる君の車から降りたのを偶然見てしまったようだった。まさか誰かに見られているとは思っていなくて頬に熱が集まる。


「ふふふ、まあ、気づいたのは私だけだけどね~。いい夜になりそうね?」
「い、いい夜って……!」


 まるで、この後のことを見透かしたような言い方。里子は真っ赤な顔の私を見て、楽しそうに肩を揺らした。

 声を詰まらせていると、落ち着いた声が横から割り込んできた。


「お、早見と向坂も、もう来てたのか」


 振り向くと、グラスを片手にした鶴岡さんがこちらへ歩いてきた。いつもよりも細身のスーツにシルバーのタイを合わせている。

 彼も今到着したようで、まだ受け取ったばかりのワイングラスを手にしていた。
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