お別れしたはずなのに、トラウマCEOの淫らな求愛にカラダから蕩かされています⁉︎
 そう自分に言い聞かせて、受け止めようとしたのに――

 約束の日、訪れた現実は、思っていたよりもずっと残酷だった。


「兄さん、そういや、部屋においておいたやつ、見た? 感想聞きたがっていたよ」


 待ち合わせ場所で声を掛けようとした私は、思いがけない会話が聞こえて来た。
 彼の隣には陸君がいた。きっと、たまたま居合わせたとか何かだろう。
 だけれど、どうしてこんなタイミングで、そんな会話が聞こえてしまったのか。タイミングのよすぎる自分を恨みたい気分だった――


「ああ、あれ見たよ。最高だったな。レースも上品だし、色も形もよし。やっぱり、女性は大きくて見栄えもいい方が惹かれるだろう……? あれを見て、再確認した。もう〝みのり〟に固執するのはやめようと思ったよ」


 心がズタズタに引き裂かれた。
 地面に足が張り付いたように動かなくて、呼吸が苦しい……

 はる君の放った言葉が何度も頭の中でエコーした。

 私の名前がはっきり出てしまった以上、気のせいで済ませるには無理があった。
< 29 / 339 >

この作品をシェア

pagetop