夜風にさらわれたお姫様

次の瞬間。


ぐい。

「きゃっ」

榴愛の身体がベッドへ押し倒された。

「……っ!?」

目の前に煌夜の顔。

近い。
近すぎる。

「こ、煌夜さん!?」

「逃げんな」

低い声。

鼓動が暴れる。

煌夜の指が榴愛の頬を撫でた。

「可愛い顔」

「っ……」

「無防備」

「や、やめ……」

「嫌」

また即答。

榴愛は涙目になる。


すると。

煌夜がふっと笑った。

「今日はこの辺で勘弁してやる」

「今日“は”!?」

煌夜は立ち上がる。

完全に遊ばれてる。


でも。
嫌じゃない自分がいて困る。


障子へ向かう煌夜が、ふと足を止めた。

「榴愛」

「……はい」

「もう一人で抱え込むな」

「……」

「怖かったら頼れ」

優しい声だった。

榴愛は胸が熱くなる。

「……はい」

煌夜は満足そうに笑うと、そのまま部屋を出ていった。


静寂。

榴愛はその場にへたり込む。

「……無理」

好きになりそう。

いやもうかなり危ない。

窓の外では夜風が吹いていた。


その夜風は、少しずつ榴愛の心を攫っていく。

まるで。
逃がさないと言うように。
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