夜風にさらわれたお姫様

昼過ぎ。


榴愛は庭を歩いていた。

広い日本庭園。

池の水音が静かに響く。

「はぁ……」

考えることが多すぎる。

裏社会。
黒崎組。
煌夜。


そして――。

自分の気持ち。

「……好きになっちゃだめなのかな」

ぽつりと零れた言葉。


すると。

「何が?」

「ひゃっ!?」

振り返ると煌夜が立っていた。

「い、いつから!?」

「今」

絶対嘘。

榴愛は顔を覆った。

「聞いてました……?」

「まぁ」

「うぅ……」

終わった。

恥ずかしくて今すぐ消えたい。

煌夜はそんな榴愛を見て少し笑う。

「誰好きになった?」

「っ……!」

「男?」

「き、聞かないでください!」

「気になる」

煌夜が距離を詰める。

榴愛は後退る。


しかし。

「わっ」

足を滑らせた。

池へ倒れそうになる。


その瞬間。

ぐい。

「……危な」

煌夜が榴愛の腰を抱き寄せた。

完全に抱き込まれる形になる。

近い。

「だ、大丈夫です……」

「どこが」

煌夜は呆れたようにため息を吐く。

そのまま榴愛の顔を覗き込んだ。

「で?」

「……え?」

「誰好きなの」

逃がしてくれないらしい。

榴愛は真っ赤になった。

「言いません……」

「なんで」

「無理です……!」

「俺知ってる奴?」

「っ……!」

その反応だけで察したらしい。

煌夜が目を細めた。

「へぇ」

「ち、違います!」

「分かりやす」

榴愛は涙目になった。

完全に遊ばれてる。


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