夜風にさらわれたお姫様
その時。
「――汚ぇ手で触んな」
低く響く声。
次の瞬間。
ドゴッ!!
男が吹き飛んだ。
「っ!?」
榴愛が目を見開く。
そこには。
息を荒くした煌夜が立っていた。
怒っている。
今まで見たことがないほど。
「煌夜さん……」
煌夜は榴愛を見る。
震えている榴愛を見た瞬間。
その目がさらに冷たくなった。
「……殺すぞ」
ゾクリ、と空気が震える。
男は怯えながら立ち上がった。
「し、白城……!」
煌夜は一歩前へ出る。
圧倒的だった。
男は逃げるように窓から飛び出していく。
静寂。
煌夜はすぐ榴愛の元へ来た。
「怪我は」
「……っ」
安心した瞬間、涙が溢れた。
「こわ、かった……」
煌夜の表情が揺れる。
次の瞬間。
ぎゅっ。
強く抱き締められた。
「悪ぃ」
低い声。
「怖がらせた」
榴愛は煌夜の服を掴む。
「煌夜さん……」
「……もう無理」
煌夜がぽつりと呟いた。
「我慢できねぇ」
「……え?」
煌夜が榴愛の頬に触れる。
真っ直ぐな目。
逃げられない。
「好きだ」
榴愛の呼吸が止まる。
「お前が欲しい」
心臓が壊れそうだった。
ずっと怖かった。
でも。
今、一番強く感じているのは。
嬉しい。
その気持ちだった。
榴愛は涙を拭い、小さく笑う。
「……私も」
「……」
「煌夜さんが好きです」
その瞬間。
煌夜が目を見開く。
次の瞬間。
ぐい、と引き寄せられた。
「んっ……」
唇が重なる。
優しく。
甘く。
でも少しだけ乱暴に。
「……っ」
息が漏れる。
煌夜が額を合わせた。
「もう逃がさねぇ」
榴愛は真っ赤になりながらも、小さく頷いた。
こうして。
裏社会の若頭と、“表の女の子”。
危険で甘い恋が始まった。