夜風にさらわれたお姫様

榴愛は恐る恐る広間へ向かった。


「お、姫ちゃん来た」

「彼女だー」

「煌夜さん朝から機嫌いいっすよ」

「蒼空うるせぇ」

組員たちがニヤニヤしていた。

やめて。

恥ずかしくて死ぬ。


そして。

広間の奥。

煌夜がこちらを見た。

「榴愛」

「……お、おはようございます」

「おはよ」

普通。

なのに。

榴愛の心臓だけがおかしい。

煌夜は自然に隣を叩く。

「座れ」

「……はい」

榴愛が座ると、煌夜は当然のように頭を撫でた。

「っ!?」

「髪跳ねてる」

「や、やめ……!」

周囲が騒ぎ始める。

「うわ甘っ」

「煌夜さん溺愛モードじゃん」

「記念日だ記念日」

「赤飯?」

「だからやめろ」

煌夜は呆れながらも、どこか機嫌が良さそうだった。

榴愛は顔を覆う。

無理。

恥ずかしい。


その時。

「はい榴愛ちゃん」

燈香が朝食を置いてくれる。

「ありがとうございます……」

「ふふ、可愛い」

「っ」

燈香にまで微笑ましそうに見られた。

逃げたい。


朝食中。

煌夜は自然に榴愛の皿へ卵焼きを乗せた。

「食え」

「え」

「好きだろ」

「な、なんで知ってるんですか」

「昨日言ってた」

覚えてるんだ。

そんな小さいこと。

榴愛の胸がじんわり温かくなる。


「煌夜って意外と彼氏力高いよね」

心桜が感心したように言う。

「そりゃ初彼女だし」

依吹がさらっと爆弾を落とした。

「……え?」

榴愛が固まる。

煌夜が眉を寄せた。

「依吹」

「事実ですよね?」

「……」


え。

初彼女?


榴愛は煌夜を見る。

「……ほんとですか?」

「……まぁ」

「っ」

なんか急に恥ずかしくなった。

「意外?」

煌夜が少し不機嫌そうに聞く。

「い、いや……モテそうだから……」

「興味なかった」

さらっと返される。

「でも今は?」

心桜がニヤニヤする。

煌夜は迷いなく言った。

「榴愛しかいらねぇ」

「っっ!!」

榴愛は湯気が出そうだった。

無理無理無理。

心臓持たない。


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