夜風にさらわれたお姫様
帰り道。
榴愛は少し落ち込んでいた。
すると。
「榴愛」
「……?」
黒い高級車。
窓が開く。
煌夜だった。
「煌夜さん!?」
「迎え」
「え、仕事は」
「終わらせた」
さらっと言う。
蒼空が苦笑した。
「姫ちゃん心配で来ちゃったらしいっす」
「蒼空」
「いてっ」
燐斗に小突かれている。
榴愛は思わず笑った。
「あと榴愛、さん付けと敬語やめろ」
煌夜が何故か言ってきた。
「⋯⋯え、いいの?」
「あぁ、むしろその方がいい」
「わかった、煌夜」
車へ乗り込む。
煌夜は榴愛を見るなり眉を寄せた。
「何かあったか」
「うん……ちょっとだけ」
榴愛が説明すると、煌夜の目が冷える。
「顔見られた?」
「たぶん……」
「……チッ」
舌打ち。
車内の空気が少し張り詰める。
榴愛は慌てて言った。
「で、でも燐斗さんたちが守ってくれたよ!」
「……」
煌夜は少し黙り、榴愛の頭を引き寄せた。
「わっ」
そのまま肩へ抱き込まれる。
「煌夜?」
「無事ならいい」
安心したような声だった。
榴愛は胸が熱くなる。
「……心配しすぎだよ」
「するに決まってる」
即答。
「お前狙われてんだから」
「……」
「それに」
煌夜が榴愛の耳元で囁く。
「好きな女だし」
「っっ!!」
榴愛は顔を真っ赤にした。
近い。
声がずるい。
煌夜は楽しそうに笑う。
完全に弄ばれてる。