夜風にさらわれたお姫様

その時。


依吹が広間へ入ってくる。

「煌夜」

表情が真面目だ。

空気が変わる。

「黒崎組が動きました」

「……どこだ」

「東区画」

煌夜の目が鋭くなる。

「人数は」

「30ほど」

駿が舌打ちした。

「最近派手だな」

依吹が榴愛を見る。

「榴愛さん、今日は絶対屋敷から出ないでください」

「……はい」

榴愛は頷いた。

怖い。

でも今、自分が我儘を言ってはいけないことくらい分かる。

煌夜が立ち上がる。

「行ってくる」


その背中を見た瞬間。

榴愛は咄嗟に手を掴んでいた。

「……榴愛?」

「……気を付けて」

小さな声。

煌夜は一瞬目を見開き、ふっと笑った。

「ん」

そのまま榴愛の頭を撫でる。

「待ってろ」


白鴉組のメンバーたちが次々と出ていく。

広間が静かになった。

榴愛は胸の奥がざわざわしていた。

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