夜風にさらわれたお姫様

昼過ぎ。


榴愛は部屋で服選びに苦戦していた。

「みおぉぉ……」

「はいはい」

心桜が呆れながらベッドへ座る。


「どっちがいいと思う?」

榴愛は二着のワンピースを見せた。

「んー、こっち」

「理由は?」

「煌夜が好きそう」

「っっ!!」

榴愛は顔を覆った。

「なんでそういうこと言うの!?」

「事実だし」

心桜はニヤニヤしている。

「でも煌夜って絶対榴愛なら何着ても可愛いって言うよ」

「……言いそう」

容易に想像できた。


すると。

コンコン。

「榴愛」

煌夜の声。

「っ!?」

榴愛は飛び上がる。

「ちょ、待って!」

慌てて鏡を見る。

変じゃないよね!?


深呼吸して扉を開ける。

「お待たせしま――」

言葉が止まった。

黒シャツ。
黒コート。
シルバーアクセ。

いつもより少しラフな格好なのに、とんでもなく格好良い。

「……」

煌夜が榴愛を見る。


数秒沈黙。

「……可愛い」

やっぱり言った。

「っ……」

榴愛は真っ赤になる。

煌夜はそんな榴愛へ手を差し出した。

「行くぞ」

「……うん」

手を繋がれる。

自然な動作。

でも榴愛の心臓は全然自然じゃない。


外へ出ると、透が車の前に立っていた。

「煌夜さん、車――」

「今日はいい」

「え?」

煌夜は榴愛を見る。

「普通のデートしたい」

その言葉に胸がきゅっとなる。


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