夜風にさらわれたお姫様
夜。
榴愛は縁側に座って夜空を見ていた。
静かな風。
虫の声。
すると。
「ここいたか」
煌夜が隣へ座る。
「……まだ怒ってる?」
「何に」
「燐斗さんのこと」
煌夜は少し黙った。
「……別に怒ってねぇ」
「でも嫉妬してたよね」
「した」
即答。
榴愛は吹き出してしまう。
「素直すぎ」
「お前相手には隠せねぇ」
その言葉に胸が熱くなる。
煌夜は榴愛の肩へ頭を預けた。
珍しい。
少し疲れてるのかもしれない。
榴愛はそっと煌夜の髪を撫でた。
「……」
煌夜が少し目を細める。
大型犬みたい。
「榴愛」
「はい?」
「お前も嫉妬しろよ」
「えっ」
「俺ばっか不公平」
榴愛は困った。
でも。
少し考えて、ぽつりと言う。
「……今日、女の人に話しかけられてたよね」
煌夜が目を瞬かせる。
「あぁ」
「ちょっと嫌だった」
沈黙。
次の瞬間。
煌夜が吹き出した。
「可愛」
「笑わないでよ!」
「無理」
煌夜は楽しそうだった。
そのまま榴愛を抱き寄せる。
「安心しろ」
耳元で囁かれる。
「俺、お前しか見てねぇから」
夜風が二人の髪を揺らす。
危険な世界の中で。
少しずつ深まっていく想い。
でもその裏で、夜坂街は確実に牙を剥こうとしていた。