夜風にさらわれたお姫様
すると。
「煌夜」
依吹が真面目な声で呼ぶ。
空気が少し変わった。
「……どうした」
「東区画で黒崎組がまた動いています」
広間が静かになる。
煌夜の表情が切り替わった。
さっきまでの柔らかい空気が消える。
「人数は」
「40前後」
駿が眉を寄せた。
「かなり増えてんな」
「月夜の牙戦が近い可能性があります」
榴愛の胸がざわつく。
楽しい時間のあとだからこそ、余計に現実が怖かった。
すると。
煌夜が榴愛の手を握った。
「そんな顔すんな」
「……でも」
「大丈夫」
いつもの言葉。
でも今は、その言葉だけに縋りたかった。