夜風にさらわれたお姫様

夜。


榴愛は自室でぼんやり窓の外を見ていた。

遠くでサイレンが鳴っている。

まだ抗争は続いている。

「……」

怖い。

でも。

もう前みたいに“ただ逃げたい”だけじゃなかった。

自分も、煌夜たちの傍にいたい。

そう思ってしまう。


その時。

コンコン。

「榴愛」

煌夜の声。

「はい」

扉が開く。

煌夜は少し疲れた顔をしていた。

でも榴愛を見ると、ほんの少しだけ表情が柔らかくなる。

「寝れねぇの」

「少しだけ」

煌夜は何も言わず隣へ座る。

静かな時間。


すると。

「……怖かった」

煌夜がぽつりと呟いた。

榴愛は目を見開く。

「え?」

「お前攫われた時」

低い声。

「頭真っ白になった」

榴愛の胸が締め付けられる。

煌夜は苦笑した。

「若頭失格だな」

「そんなこと……!」

榴愛は思わず煌夜の服を掴む。

「私、嬉しかったの」

「……」

「迎えに来てくれて」


その瞬間。

煌夜の目が揺れた。

榴愛は続ける。

「怖かったけど、煌夜さん来てくれるって信じてたから」

静かな沈黙。


その後。

煌夜が榴愛を抱き寄せた。

強く。

壊れそうなくらい。

「……お前」

低い声。

「ほんと俺を壊すの上手いよな」

「へ?」

「離せなくなる」

榴愛の鼓動が速くなる。


煌夜が額を合わせた。

「榴愛」

「……はい」

「もしこの先もっと危なくなっても」

真っ直ぐな目。

「俺の隣にいる?」

その質問に、榴愛は少しだけ息を止めた。

普通なら怖くて逃げる。


でも。

今の答えは決まっていた。

「……います」

煌夜の目が細くなる。

榴愛は小さく笑った。

「煌夜の隣がいい」


その瞬間。

煌夜が深くキスをした。

「んっ……」

甘い。

でもどこか切ないキス。

榴愛は煌夜の服をぎゅっと掴む。

「……好き」

キスの合間に囁かれる。

榴愛の胸が熱くなる。

「私も……好き」

煌夜は少し笑った。

その顔は、若頭じゃなくただの恋人だった。


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