夜風にさらわれたお姫様

夜。


煌夜は屋上にいた。

夜坂街を見下ろしている。

その背中へ榴愛が近付く。

「煌夜」

「ん」

煌夜は自然に榴愛を隣へ引き寄せた。

「寒ぃ」

「まだそこまでじゃないよ」

「俺が寒い」

絶対嘘。

榴愛は少し笑った。

静かな夜風が吹く。


その時。

「榴愛」

「はい?」

煌夜が真っ直ぐこちらを見る。

「絶対守る」

低い声。

強い目。

「だから隣いろ」

榴愛は小さく笑った。

「……うん」


そして。

そっと煌夜へ寄り添う。

夜坂街はまだ荒れている。


月夜の牙戦も終わっていない。


それでも。

今、二人には確かな想いがあった。


守りたいもの。

失いたくないもの。


それが、お互いだった。
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