夜風にさらわれたお姫様
9月9日
夏の暑さが少しだけ和らぎ始めた頃。
夜坂街には、束の間の静けさが戻っていた。
もちろん抗争が完全に終わったわけではない。
けれど、大規模な衝突は減り、白鴉組本部邸にも久しぶりに穏やかな空気が流れていた。
そして――。
9月9日。
今日は榴愛の誕生日だった。
「お誕生日おめでとー!!」
朝から広間に響く蒼空の声。
「姫ちゃん二十歳!」
「おめでとうございます」
「おめでと」
組員たちが次々祝ってくれる。
榴愛は少し照れながら頭を下げた。
「ありがとうございます……!」
すると。
ぐい。
「きゃっ」
後ろから抱き寄せられる。
「俺の彼女の誕生日」
低い声。
煌夜だった。
「煌夜さん、朝から距離近いです!」
「誕生日だから許せ」
「意味分かんないって!」
周囲が笑い出す。
「煌夜さん今日さらに甘くない?」
「もうずっと抱き締めてるっす」
「離す気ねぇな」
駿が呆れていた。
煌夜は全く否定しない。
むしろ当然みたいな顔をしている。
榴愛は顔が熱かった。