私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
「千紘はどうだったのだ?」

不意に話を振られ、私は固まってしまった。

複雑な気持ちが、まだ残っていて、
なんと答えればいいか、わからなかったからだ。

しかし、そんな私とは裏腹に、
興奮気味の悠真は、私の言葉を、
楽しそうに待ちわびている。

「勾玉、きれいだったね」

ぽっと口から飛び出た言葉。

しかし、これは墓穴を掘ってしまったのではないか、
不安になる。

でも、そんな不安は、
悠真の言葉で吹っ飛んだ。

「やはり千紘も欲しいと思ったか!」

「は?」

予想外の言葉。

「そう思ってな、このようなものを見つけたのだ」

そう言って悠真は一枚の紙を取り出した。

そこには
「子ども向け“勾玉づくり体験“の申し込み」
と書かれたチラシがあった。

なんじゃそりゃ!?

それを見つけて来た悠真にも驚きだが、
この令和の時代に、
勾玉を作ることができる場所があったとは。

「ぷっ」

思わず吹き出す。

「何がおかしい?」

突然、笑い出した私を、
不思議そうに悠真は見つめている。

「だって、勾玉作るって……それに、子ども向け」

なぜか、笑いが止まらない。

「そうか。童むけだったとは」

真剣に言う悠真の姿がさらに、
私の笑いのツボを刺激した。

「あはは、おもしろすぎだよっ」

笑いすぎて涙が出てきた。

「なぜ泣いている?」

「ちがっ、やめ、てっ」

真剣に心配する悠真の顔が、
私の笑いをさらに加速させる。

死ぬ!

このままだと笑い死ぬ!

笑いすぎて、
意識を失いそうになった時だった。

ふと、お土産コーナーに勾玉の、
ストラップが置いてあったことを思い出した。

この時の私が、何を思ったのかは思い出せない。

「ちょっと待ってて」

悠真にそう言って、カフェを出る。

走って国立博物館のお土産コーナーへ行き、
ピンクと緑の勾玉のストラップを一つずつ買った。

そして急いでカフェに戻り、
悠真へ緑の方を差し出す。

「こ、これは翡翠の勾玉ではないか!」

興奮気味に受け取る悠真。

「これは、ストラップだから、本物じゃないよ」

「そうか……」

少し悲しそうにする悠真。

「私はこっち」

ピンクの勾玉のストラップを悠真に見せる。

「おお!これはペアルックというやつか!」

すごく嬉しそうに、悠真は言った。

「ペアルックではないけど、お揃いだね」

どこで覚えたかわからない、ペアルックという言葉。

でも、そんなことどうでもいい。

「良いな、お揃い」

私たちは、勾玉のストラップを手に、
お互いに笑い合った。

「無くすなよ」

私がそう言うと、
悠真は勾玉を大事そうに握った。

「もちろんだ」

その表情は、
どこか懐かしいものを見るようだった。

側から見たら、変人二人。

でも、私はこの時間がたまらなく幸せだった。
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