私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
「千紘!」

呼び止めても、
千紘は振り返らなかった。

バタン。

扉が閉まる。

悠真は立ち尽くした。

「……なぜだ」

何かを間違えた。

それだけは分かる。

だが、
何を間違えたのかが分からない。

「心に決めた相手がおる」

その言葉が、頭の中を巡る。

それは事実だった。

我が愛したのは、軽大娘皇女。

今でも、忘れたことはない。

だが――

今日、千紘が部屋へ駆け込んだ瞬間。

胸の奥が、ひどく苦しくなった。

あの苦しさは、一体何なのだろうか。
< 48 / 78 >

この作品をシェア

pagetop