私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
次の日、目を覚ますと、
世界がぐるぐると回っていた。

何これ……

とにかく目が回って、吐き気がする。

時計に目を向ける。

まだ、寝ていても問題のない時間だった。

でも、この状態で二度寝なんてできるわけない。

目が覚めていくにつれ、
体のだるさ、熱さ、頭痛が私を襲い始めた。

「うぅ……」

これは、やばい。

でも、今日は仕事で大事な会議がある。

休むわけにはいかない。

「っ……」

体を動かそうとするも、
なかなか思うようにいかない。

とりあえず、悠真を呼ぼう。

私はベットの隅に置いてある、
スマホに手を伸ばした。

しかし、うまく手が動かず、
スマホを床に落としてしまった。

やばい!

声を出そうとしても、全然、声も出ない。

私、このまま死んじゃうのかな……

そう、涙がこぼれ落ちた時だった。

「千紘!」

慌てた様子で、部屋に入ってくる悠真。

「ゆ、う……ま……」

思わず、そんな彼に手を広げる。

悠真は、まっすぐに私を抱きしめた。

「こんなにも体が熱いとは!これは今日は会社を休み、医師のもとへ行かねばならぬな」

「し、ごと……だい、じ……な」

「ダメだ!本日は会社に行くことを禁じる」

そう言って、悠真は私をベットに寝かせた。

「じ〜ご〜ど……」

何度も起きあがろうとしたが、
毎回、悠馬に止められてしまう。

この番人がいる限り、
私はベットから出ることはできないだろう。

まぁ、何よりこの体調で仕事に行っても、
迷惑をかけてしまうだけかもしれない。

私は、声もうまく発することもできないので、
一ノ瀬部長にメッセージだけ送った。

すると、すぐに返信が来た。

そこには、
『こっちは任せろ。休んでおけ』とだけ、
書かれていた。

悠真はそのメッセージを見て、

「千紘がこんなに苦しんでいると言うのに。あの男は冷たいやつだな」

と文句を言っている。

その姿は、まるで子供のようだ。

部長をかばって、悠真が拗ねてもめんどくさい。

「あり、がとね」

そう言うと、悠真は

「当たり前だ」

と、誇らしそうに言った。

そして、私はある重大な問題に気づいてしまった。

それは、この家には風邪薬もなければ、
栄養ドリンクや、経口補水液などもない。

でも、この状態で買いに行くのは不可能。

つまり、すぐに頼めるのは、悠馬しかいない。

しかし、彼は買い物さえ、一人で行ったことはない。

正真正銘、『はじめてのつかい』だが、
見守るカメラマンがいてくれるわけでもない。

ましてや大の大人が……

考えただけで、悪寒がする。

そう、私が悩んでいると、
急に悠馬は立ち上がった。

「え、なに?」

すると悠真は、自信満々に

「我が必要なものを、買ってこよう」

そう言って部屋を出ようとする。

「ちょっ」

慌てて、悠真の腕を掴む。

古墳時代の皇子の『はじめてのおつかい』。

そんなの不安しかないだろう。

でも……

「千紘、我はそなたの苦しむ姿は見たくないのだ」

そう言って、私を真剣に見つめる。

もう、これは任せるしかないのか……

「我は、必ず目的を果たし帰ってくる」

そんな風に言われたら、もう頼るしか道はない。

「わか、た。でも、その代わりこれだけは守って」

そう言って、私はメモ帳を取り出す。

〈ルール〉

その① 絶対に、変なことは言わない。

その② 必要なものだけ買う。

その③ わからなかったら、すぐに連絡する。

私はそうメモを書き、
その裏に、欲しいものリストを書いた。

不安しかない。

本当に大丈夫だろうか。

その不安で、さらに目眩がひどくなる。

「任せろ!」

そう言って、悠真は飛び出していった。

この後、私は皇子の『はじめてのおつかい』
の恐ろしさを知ることになるーー
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