私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
玄関の扉が閉まる。

私は天井を見つめた。

不安だ。

とにかく不安だ。

買い物を頼んだだけなのに、
なぜこんなにも命を削られている、
気がするのだろうか。

すると数十分後。

プルルルル。

スマホが鳴った。

「っ!」

慌てて画面を見る。

悠真からだった。

「もしもし……」

『千紘!大変だ!』

開口一番、悠真は叫んだ。

「な、なに!?」

『店に入ったのだが、薬が見当たらぬ!』

「店員さんに聞いて!」

『わかった!』

電話が切れる。

数分後。

再び着信。

『千紘!』

「今度は何!?」

『店員に薬を探していると伝えたら、症状を聞かれた!』

「聞かれるでしょ!」

『我は千紘の様子を伝えた!』

嫌な予感がした。

「何て言ったの?」

『朝から世界が回り、苦しそうにしておる。顔も赤く、声も出ぬ。今は寝台から起き上がれぬ状態だ、と』

「うん」

『そしたら救急車を呼びますか?と聞かれた』

「待って待って待って!」

頭を抱える。

たぶん説明が大げさすぎた。

『呼ばなくて良いのか?』

「今は大丈夫!」

『そうか!』

電話が切れた。

私は枕に顔を埋める。

まだ何も買えていない。

大丈夫だろうか。

本当に大丈夫だろうか。

その時だった。

ガチャ。

玄関の扉が開く音がした。

「千紘!帰ったぞ!」

思ったより早い。

私は少し安心した。

しかし。

悠真が抱えていたのは。

風邪薬一箱。

スポーツドリンク二本。

ゼリー三つ。

そして――

なぜか巨大な白菜だった。

「……」

「……」

「悠真」

「なんだ?」

「その白菜は何?」

「店の者に病人には野菜が必要だと言われた」

「だから白菜?」

「立派だったのでな」

誇らしげに白菜を掲げる悠真。

私は笑う気力もないまま、

「ありがとう……」

とだけ呟いた。

こうして、古墳時代の皇子による
『はじめてのおつかい』は、
幕を閉じた。
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