私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
第3章 皇子はお留守番をする

第11話 千紘、社員旅行へいく

今日は久しぶりに、あの夢を見た。

まるで私自身が、軽大娘皇女になる夢。

私は白い衣をまとっていた。

見覚えのある場所。

いや、見覚えがあるはずがない。

それなのに知っている。

胸が苦しくなるほどに。

遠くから、大勢の人の声が聞こえる。

泣いている人。

怒鳴っている人。

何かを責める人。

その全てが、
私たちへ向けられていた。

私は走る。

必死に。

誰かの手を握りながら。

その手の主を見上げる。

悠真と同じ顔。

でも、悲しみに満ちた顔をしていた。

「軽大娘」

彼は私の名を呼ぶ。

その声を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。

離れたくない。

離れたくないのに。

周囲の声は、それを許してくれなかった。

『許されぬ』

『穢れた関係だ』

『皇子を追放せよ』

そんな言葉が、刃のように飛んでくる。

私は耳を塞ぎたかった。

でも、彼の手だけは離したくなかった。

気づけば景色が変わっていた。

見知らぬ海。

荒々しい波。

冷たい風。

伊予国――。

軽皇子が流された地。

私は震える足で、彼の元へと駆け寄る。

そして抱きしめた。

「なぜ来た」

そう言いながらも、彼は泣いていた。

私も泣いていた。

会いたかった。

ただ、会いたかった。

それだけだった。

しかし。

幸せな時間は長く続かなかった。

どれだけ願っても。

どれだけ祈っても。

私たちに未来は与えられなかった。

夜の海が見える。

波の音が聞こえる。

冷たい風が吹く。

軽皇子は静かに私を抱き寄せた。

「すまぬ」

違う。

謝らないで。

そう言いたいのに、声が出ない。

「本当は」

彼は苦しそうに笑う。

「お前を幸せにしたかった」

涙が溢れる。

止まらない。

「だが、それは叶わなかった」

私は首を振る。

違う。

そんなことない。

あなたと一緒なら――。

「軽大娘」

彼は私の頬に触れた。

震える指。

愛おしそうな瞳。

そして。

「来世があるなら」

そう言って、彼は額を私に寄せた。

「今度こそ、お前を守りたい」

その言葉と共に。

私たちは手を繋いだまま、
荒れ狂う海へと入っていく。

そのま、暗闇へと落ちていった。

離れないように。

二度と離れないように。

強く。

強く。

手を握りながら。
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