私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
朝食を終え、今日の午前中に向かうのは、
唐招提寺と薬師寺という有名なお寺らしい。

薬師寺では写経体験をするとのことで、
結奈ちゃんは朝から不満そうだった。

「結奈ちゃん、そんなに嫌そうな顔しなくても……」

私は隣でふてくされている結奈ちゃんに、
苦笑した。

「だって、写経ってずっと字を書くんですよね?」

「そうみたいだね」

「私、習字めっちゃ苦手なんですよぉ」

「私だって得意じゃないよ」

「先輩は字が綺麗だからいいじゃないですか〜」

そんな会話をしているうちに、
目的地へ到着した。

唐招提寺は思っていたより静かな場所だった。

昨日の奈良公園とは違い、
観光客の姿も少ない。

風が吹くたびに木々が揺れ、
どこか時間の流れまでゆっくりになったような気がした。

「地味な感じで、人がぜ〜んぜんいないですね」

「結奈ちゃん、そんなこと言わないの」

私は思わず笑ってしまう。

確かに鹿はいない。

お土産屋さんも少ない。

でも、その分だけ、
ゆっくり景色を眺めることができた。

ふと空を見上げる。

悠真も、
こんな空を見ていたのだろうか。

そんなことを考えた瞬間。

なぜか胸の奥が、
少しだけ温かくなった。
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