私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
夜風が頬を撫でる。

私は小さく息を吐いた。

その時だった。

「何か楽しいことでもあったのか?」

突然、後ろから声がした。

「うわっ!」

驚いて振り返る。

そこには、一ノ瀬部長が立っていた。

「ぶ、部長!?」

驚きのあまり、なぜか私は、
スマホを宙に投げてしまっていた。

「あっ」

何度も、私の手から逃げるスマホを、
なんとかキャッチする。

「そんなに驚くな」

そう言って部長は苦笑する。

「いや、急に後ろから声をかけられたら誰だって驚きますよ」

私が文句を言うと、

「それは悪かった」

と部長はいつもの淡々とした感じで言った。

部長は私から少し離れた場所に腰を下ろす。

しばらく沈黙が続く。

「彼氏か?」

不意に部長から、予想外の質問が来て、
驚く。

「へ?」

思わず変な声が出る。

「さっき電話していただろう」

「ち、違います!」

慌てて否定する。

すると部長は、

「そうか」

とだけ言った。

それ以上は何も聞いてこない。

夜風が静かに吹く。

遠くで虫の声が聞こえた。

「高瀬」

「はい?」

「奈良はどうだ?」

部長は夜空を見上げながら言う。

「不思議な場所です」

それが今の私の素直な気持ちだった。

歴史も。

夢も。

悠真も。

全部がどこかで繋がっている気がしていた。

「そういえば、部長はなぜここに?」

「俺が来たら悪いのか?」

そう言って、部長は少し意地悪な顔をした。

「べ、べつに。何もないですけど……」

そんな私の反応を見て、
部長は面白がっているようだった。

「部長も、そんな顔するんですね……」

思わず言葉に出てしまったいた。

慌てて、口を覆い、部長を恐る恐るみる。

でも、部長は気分を悪くしてる様子もなく、

「俺も人間だからな」

と、穏やかな顔で笑った。

それにしても、整った顔だーー

私は気づかぬうちに、部長の顔を、
じっと見つめてしまっていた。

「そんなに見つめられると、困るんだが」

「す、すみません!」

「ああ」

気まづい、静かな時間が流れる。

すると部長は、スッと立ち上がると、

「早く寝るんだぞ」

と言って、中へ戻って行ってしまった。

もしかしたら、気を悪くさせてしまっただろうか。

明日、気まずくならないといいけど……
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