True Love─最初の恋、最後の愛─
11.ありのままの姿で
それからしばらく良祐と会うことはなかったけれど、連絡は毎日した。
私と良祐のことは既に実家の近所で有名になった、とか。
早瀬家のリフォーム会議にはなぜか私が参加してる、とか。
……もちろん、しばらくは二人で暮らしたいけれど。
仕事が始まればまた会えるけれど、ゆっくりデートしたいな。
とメッセージを送ると、良祐から電話がかかってきた。
『明日、部屋を見に行かないか?』
今の私と良祐の部屋は二人で暮らすには狭いので、新しく部屋を借りることにしていた。
『それから……見て欲しいものがあるから、うちにも来いよ。そのまま泊まってくれたら俺は万々歳だけど』
着替えやメイクセットを詰め込んだ鞄は一旦良祐の部屋に置いて、そのまま二人で出かけた。初詣は別々に済ませていたけれど、改めて一緒に行った。
三が日を過ぎたからそんなに混雑していないけれど、それでもまだまだ参拝者は多い。
はぐれないように手を繋いで、お参りの列を探して並んだ。
屋台で買ったたこ焼きとたいやきを近くの公園で食べてから、良祐の親戚がやっているという不動産屋に行った。良祐が私との関係を説明すると、ものすごく良いマンションを紹介してくれた。
「交通の便が良いしペットも飼えるし、近くに公園も多いから新婚さんに人気だよ。もし一軒家が良いんなら──」
返事は後日することにして、資料だけをもらってきた。ゆっくり悩む暇はないけれど、ちゃんと考えたい。
「ねぇ、晩ご飯はどうする? 明日の朝ごはんと」
「そうだな……幹奈の手料理が良いな。ハンバーグだな」
良祐の家には本当にほとんど食品がないらしく、帰りにスーパーに寄った。ハンバーグに必要な材料と、野菜に果物、パンも買った。でもミンチは少しだけで、代わりに豆腐だ。
「ハンバーグなのに肉いらないのか? 俺、肉食いてぇ」
「ちゃんと野菜食べてる? 大丈夫だよ、豆腐があれば」
男の一人暮らしなんて、きっと栄養バランスは偏る。だからこれからはヘルシーで満腹になるものをたくさん作ってあげたい。
豆腐ハンバーグは良祐も満足してくれて、いつか温めて食べられるようにと余分に作っておいた分まで欲しそうにしていた。
「あー幸せ。幹奈、俺、仕事頑張るから、おまえは美味いもの作ってくれ」
良祐は私に後ろから抱きついて、子供のように甘えた。
「はいはい。そうだ、部屋はどうする? マンションか家か」
私がそう言うと──。
「それもあるけど、幹奈に見てもらいたいものがいっぱいあるんだ」
良祐は私から離れて違う部屋へ行き、やがて紙袋の束を抱えて戻ってきた。
「……なにそれ」
「結婚式場のパンフレット。こっちのほうが先に決めないと、したいときに出来ないからな。年末に取り寄せて、こないだ届いたんだ」
☆
俺が勝手に取り寄せたことに不満そうだったけれど、幹奈はすぐに笑顔になっていた。
ホテルからチャペル、ガーデン、レストラン貸切まで、近場の会場のパンフレットを全部請求した。
俺は正直どこでも良いけれど、幹奈は絶対、いろいろこだわるはずだ。一生に一度のことだから悔いは残したくないし、最高の日にしてやりたい。
幹奈と付き合えそうだと思ってから、金の無駄使いはやめた。それまでずっと遊びに費やして──本当にバカだ、過去の俺。
ずっと幹奈が好きだったのに、幹奈も実はそうだったのに。
もっと早くに気付いていたら、もっと余裕があったはずなのに。
「どうしたの? 難しい顔して」
「あ……何でもない。幹奈なら何着ても似合うだろうな」
「そんなことないよー。良祐だって……」
二人で笑いながらパンフレットを捲り、どれがいいか話しあった。
もちろんすぐに決まるわけがなくて、明日ゆっくり考えることにして布団に入った。
俺が幹奈に手を出さないのが、彼女は不思議だったらしい。
「良祐のことだから、絶対脱がされると思ってたのに」
「どういう意味だよ? 今日は歩きまわって疲れただろ。ゆっくり休め」
本当は抱きたかったけれど、俺もバカじゃない。
でも何もしないのもかわいそうな気がして、キスはたっぷりした。幹奈は満足したようで、俺の手を握って目を閉じた。可愛すぎる寝顔を見つめ、思わず額に唇を寄せた。
年が明けて最初の週末に新年会があって、仕事帰りにみんなで居酒屋へ行った。全員は参加出来なかったけれど、幹奈はメンバーに入っている。
そして座敷に案内されるなり、俺は幹奈の横を陣取った。
「……なんで隣に来るの?」
幹奈はもちろん他の奴らも全員驚いてたけれど、俺はそこを離れなかった。
俺が幹事をしていたからだ。
今年も頑張りましょうと軽く挨拶してから、乾杯の前に隣の幹奈を見た。
「おい、立て」
「……なんで?」
「良いから、立て。早くしろ」
幹奈が渋々立ち上がると、俺はそのまま腰に手を回した。
「えっ、ちょっと?」
「盛り上がる前にすみません、こいつ──今日から俺の嫁なんで酔っても口説かないでくださいね」
会場の空気が変わる。
「それでは乾杯!」
なんて俺の音頭は誰も聞いちゃいねぇ。
でもそれで良い。
隣に幹奈がいてくれるなら、俺は幸せだ。
出勤前に婚姻届を役所に出したし、昨日のうちにマンションにも最低限の荷物を運んだ。
もう、こいつは絶対に離さない。
二次会なんかどうでもいい。
俺は幹奈が居ればそれでいい。
すぐに帰って風呂に入って、寝る準備が整うと俺はすぐに幹奈をベッドに運んだ。
「ずっとこの日を待ってた。今日は寝かせないから」
今日はたっぷり時間をかけると決めていた。いっそ朝までかかっても良い。
ニヤリと笑ってそっと口づける。
けれどそれでは物足りなくて、だんだん激しくなる。
お互いに温もりを求めあい、吐息が混ざる。
頑張らなくて良い。無理をしなくて良い。
俺はそのままの幹奈を愛したい──ココロもカラダも全部。
幹奈は俺を見て、とても幸せそうな顔をしていた。
私と良祐のことは既に実家の近所で有名になった、とか。
早瀬家のリフォーム会議にはなぜか私が参加してる、とか。
……もちろん、しばらくは二人で暮らしたいけれど。
仕事が始まればまた会えるけれど、ゆっくりデートしたいな。
とメッセージを送ると、良祐から電話がかかってきた。
『明日、部屋を見に行かないか?』
今の私と良祐の部屋は二人で暮らすには狭いので、新しく部屋を借りることにしていた。
『それから……見て欲しいものがあるから、うちにも来いよ。そのまま泊まってくれたら俺は万々歳だけど』
着替えやメイクセットを詰め込んだ鞄は一旦良祐の部屋に置いて、そのまま二人で出かけた。初詣は別々に済ませていたけれど、改めて一緒に行った。
三が日を過ぎたからそんなに混雑していないけれど、それでもまだまだ参拝者は多い。
はぐれないように手を繋いで、お参りの列を探して並んだ。
屋台で買ったたこ焼きとたいやきを近くの公園で食べてから、良祐の親戚がやっているという不動産屋に行った。良祐が私との関係を説明すると、ものすごく良いマンションを紹介してくれた。
「交通の便が良いしペットも飼えるし、近くに公園も多いから新婚さんに人気だよ。もし一軒家が良いんなら──」
返事は後日することにして、資料だけをもらってきた。ゆっくり悩む暇はないけれど、ちゃんと考えたい。
「ねぇ、晩ご飯はどうする? 明日の朝ごはんと」
「そうだな……幹奈の手料理が良いな。ハンバーグだな」
良祐の家には本当にほとんど食品がないらしく、帰りにスーパーに寄った。ハンバーグに必要な材料と、野菜に果物、パンも買った。でもミンチは少しだけで、代わりに豆腐だ。
「ハンバーグなのに肉いらないのか? 俺、肉食いてぇ」
「ちゃんと野菜食べてる? 大丈夫だよ、豆腐があれば」
男の一人暮らしなんて、きっと栄養バランスは偏る。だからこれからはヘルシーで満腹になるものをたくさん作ってあげたい。
豆腐ハンバーグは良祐も満足してくれて、いつか温めて食べられるようにと余分に作っておいた分まで欲しそうにしていた。
「あー幸せ。幹奈、俺、仕事頑張るから、おまえは美味いもの作ってくれ」
良祐は私に後ろから抱きついて、子供のように甘えた。
「はいはい。そうだ、部屋はどうする? マンションか家か」
私がそう言うと──。
「それもあるけど、幹奈に見てもらいたいものがいっぱいあるんだ」
良祐は私から離れて違う部屋へ行き、やがて紙袋の束を抱えて戻ってきた。
「……なにそれ」
「結婚式場のパンフレット。こっちのほうが先に決めないと、したいときに出来ないからな。年末に取り寄せて、こないだ届いたんだ」
☆
俺が勝手に取り寄せたことに不満そうだったけれど、幹奈はすぐに笑顔になっていた。
ホテルからチャペル、ガーデン、レストラン貸切まで、近場の会場のパンフレットを全部請求した。
俺は正直どこでも良いけれど、幹奈は絶対、いろいろこだわるはずだ。一生に一度のことだから悔いは残したくないし、最高の日にしてやりたい。
幹奈と付き合えそうだと思ってから、金の無駄使いはやめた。それまでずっと遊びに費やして──本当にバカだ、過去の俺。
ずっと幹奈が好きだったのに、幹奈も実はそうだったのに。
もっと早くに気付いていたら、もっと余裕があったはずなのに。
「どうしたの? 難しい顔して」
「あ……何でもない。幹奈なら何着ても似合うだろうな」
「そんなことないよー。良祐だって……」
二人で笑いながらパンフレットを捲り、どれがいいか話しあった。
もちろんすぐに決まるわけがなくて、明日ゆっくり考えることにして布団に入った。
俺が幹奈に手を出さないのが、彼女は不思議だったらしい。
「良祐のことだから、絶対脱がされると思ってたのに」
「どういう意味だよ? 今日は歩きまわって疲れただろ。ゆっくり休め」
本当は抱きたかったけれど、俺もバカじゃない。
でも何もしないのもかわいそうな気がして、キスはたっぷりした。幹奈は満足したようで、俺の手を握って目を閉じた。可愛すぎる寝顔を見つめ、思わず額に唇を寄せた。
年が明けて最初の週末に新年会があって、仕事帰りにみんなで居酒屋へ行った。全員は参加出来なかったけれど、幹奈はメンバーに入っている。
そして座敷に案内されるなり、俺は幹奈の横を陣取った。
「……なんで隣に来るの?」
幹奈はもちろん他の奴らも全員驚いてたけれど、俺はそこを離れなかった。
俺が幹事をしていたからだ。
今年も頑張りましょうと軽く挨拶してから、乾杯の前に隣の幹奈を見た。
「おい、立て」
「……なんで?」
「良いから、立て。早くしろ」
幹奈が渋々立ち上がると、俺はそのまま腰に手を回した。
「えっ、ちょっと?」
「盛り上がる前にすみません、こいつ──今日から俺の嫁なんで酔っても口説かないでくださいね」
会場の空気が変わる。
「それでは乾杯!」
なんて俺の音頭は誰も聞いちゃいねぇ。
でもそれで良い。
隣に幹奈がいてくれるなら、俺は幸せだ。
出勤前に婚姻届を役所に出したし、昨日のうちにマンションにも最低限の荷物を運んだ。
もう、こいつは絶対に離さない。
二次会なんかどうでもいい。
俺は幹奈が居ればそれでいい。
すぐに帰って風呂に入って、寝る準備が整うと俺はすぐに幹奈をベッドに運んだ。
「ずっとこの日を待ってた。今日は寝かせないから」
今日はたっぷり時間をかけると決めていた。いっそ朝までかかっても良い。
ニヤリと笑ってそっと口づける。
けれどそれでは物足りなくて、だんだん激しくなる。
お互いに温もりを求めあい、吐息が混ざる。
頑張らなくて良い。無理をしなくて良い。
俺はそのままの幹奈を愛したい──ココロもカラダも全部。
幹奈は俺を見て、とても幸せそうな顔をしていた。


