敵はママ!? 十歳ミミのサバイバル日記

第8話  学校生活崩壊


相変わらず。

帰宅後のスケジュールは変わらない。

ジョギング。

お手伝い。

ピアノ。

勉強。

そして──英語。

……きつい。

本当に、きつい。

学校で体育もやる。

家庭科もある。

掃除だってする。

なのに。

家に帰っても、休み時間はない。

「子どもだから疲れてる」は、ママには通じない。

むしろ。

「子どものうちから努力する子が伸びるのよ」

と言われるだけ。



◇◆◇

「おかえり、ミミ」

玄関を開けると。

ママがスマホを握りしめて立っていた。

なんだか機嫌がいい。

……嫌な予感。

「聞いてちょうだい」

ママは得意げに笑った。

「あなたの担任、葉月先生って経験の浅い先生なのね」

え。

「子どもも産んで育ててもいないのに、生意気で嫌な感じ」

胸がざわっとする。

「『消しゴムのことでミミを疑ったでしょう?』って聞いたら、『知りません』ですって!」

ママの声が強くなる。

「人を傷つけておいて、どういうつもりかしら」

私は、黙る。

言えない。

だって。

……先生は、そんなこと言ってないんだから。ミミの嘘だから。




「だから、こう言ってやったの」

ママは満足そうに笑った。

「──『この件を、ミミも私も一生忘れません!』って」

当然よね、と言いたげな顔。

「ママ……」

頭が、ずきっと痛くなった。

……そういうことだったんだ。

最近、葉月先生が私を避ける理由。

前みたいに笑ってくれない。

目も合わせてくれない。

話しかけても、なんだか急いで離れていく。

よそよそしい。

ぎこちない。




──そして。

先生は、今月で辞める。

仕方ないのかもしれない。

私のせい、なのかな。

「ママ」

勇気を出して言った。

「先生ね、次の先生が決まったら辞めるって」



すると。

ママの顔が、ぱっと明るくなった。

「そうなの?」

笑う。

すごく、うれしそうに。

「良かったじゃない」

……良かった?

胸が、もやっとした。

◇◆◇

ママの話では。

SNSで知り合った社会派ユーチューバー、

KONTOさんと一緒に、

午前十一時ごろ。

校長室へ乗り込んだらしい。



そのころ──教室では。

「ミミちゃんのお母さん、また学校来てるよ」

「葉月先生、呼び出されたからまた自習じゃん」

「ミミちゃん、お母さんにやめさせてよ!」

クラスの空気が、冷たい。

みきちゃんも。

ほかの子も。

なんだか、前と違う。

リコちゃんは──。

黙っていた。

何も言わない。

でも。

もう、前みたいに笑ってくれない。

男子たちは、ひそひそ笑っていた。

「ママたちのLIN〇グループでもさ」

「ミミの母さん、やばすぎるって話ばっか」

「モンペってやつ?」

「なにそれ?」

「モンスターペアレンツ!」

笑い声。

くすくす。

全部、聞こえてる。

聞こえないふり、したかった。




その時。

ガラッ。

教頭先生が教室に入ってきた。

自習監督。

教室が、一瞬静かになる。

そして。

教頭先生の目が──私で止まった。

いやな予感。

「なあ、ミミさん」

低い声。

腕を組んでいる。

「君がお母さんに、嘘をついてるってことは……ないよね?」

しん。

教室が静まった。

みんな、聞いてる。

絶対、聞こえた。

顔が熱くなる。

苦しい。

恥ずかしい。

怖い。

何も言えなかった。

◇◆◇

休み時間。

私は、リコちゃんの席へ走った。

「ねえ、リコちゃん……」

声が震える。

「教頭先生に、嫌なこと言われたの」

涙が出そうだった。

「みんなの前で、嘘つきみたいに言われて……」

息をのむ。

「……ママに言った方がいいかな」





その瞬間。

バンッ!!

机が大きな音を立てた。

リコちゃんが立ち上がる。

顔が、真っ赤だった。

「ミミちゃん、怖いよ!!」

教室が静まる。

私は固まった。

リコちゃんは、そのまま走って行った。

──それっきり。

近づくと、逃げられる。

話しかけても、目をそらされる。

もう。

リコちゃんは、気が付いているんだ。

もう友だちじゃなくなった。

寂しい。

寂しい。

苦しい。

でも。

誰にも言えない。



◇◆◇

【日記】7月12日 雨

なんだか、疲れちゃった。

最近、学校に行くと胸が苦しい。

学校って。

本当に、行かなきゃいけないところなんでしょうか。
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