ほたる先生は振り向かない
「まつり〜、来てたの?ならこっち来ればいいのに」

クラスメイトの一人の女子。
たまにつるむ仲間のひとりだけど、一緒に勉強するかと聞かれたら、“しない”。

私は彼女の後ろに五、六人いる顔ぶれを見て、ため息をもらしそうになった。
この人たちといたら、自習室の意味がなさそう。


「だってこっちの自習室しゃべってるだけじゃん」

「シラカバの動画ウケるから見ようよ」

「いや、いい」

「なんでー?最近付き合い悪くない?」


また歩き出そうとして、ふと足を止める。

「……まあ、そう思うならそれでいいよ」

「どういうこと?」

空気は悪くない。
別に突っかかってくる感じでもなく、素朴な疑問を投げかけられているだけという言い方。

だから、私も軽めの口調で返す。


「この間の中間、まじヤバかったの!大学行けなかったら親に捨てられそうなんだもん」

「あははは、それはまずいやつ!」

「でしょー?だからガリ勉するんだ」

深く突っ込まれる前に、じゃあねと手を振った。


開きっぱなしの自習室から、こそこそと話す声。

「え、まつりって成績いいよね?」

「そーなの?」

「そうだよー!文系制覇してんじゃないってくらいには」

「美人な上に勉強もできんの?才色兼備かよ」

「要するにもっと上を目指すんでしょ」

「あー、そういうことねー」


────なにを言われたって、別に気にしない。

私は私だ。



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