ほたる先生は振り向かない

会いに来るから

高校生活なんて、本当にあっという間だ。


夏休みが終わって。
二学期が始まって。
模試の判定に落ち込んで。

文化祭も、修学旅行も、クリスマスも。


気づけば、そのすべてが瞬く間に過ぎ去っていた。


それでも。
ほたる先生は、最後までほたる先生のままだった。


講習がなくなっても。

古典の授業が減っても。

進路が決まっても。

先生はずっと、私にとって先生のままだった。





春の気配がまだ感じられない三月初旬。


真冬ほどの厳しい寒さではないものの、コートやジャケットがなければ少し肌寒い。

卒業式を終えた私たちは、卒業証書を手に校舎のあちこちで記念写真を撮っていた。


体育館を出たばかりにもかかわらず、すでにネクタイを緩めている男子生徒。

涙で目を赤くしている女子生徒。

スマホを向け合い、何枚目かも分からないほど写真を撮り続ける人たち。

つい先ほどまで当たり前のように過ごしていた教室も。

賑やかだった廊下も。

今日で最後だと思うと、どこか不思議な感覚が胸に残った。


「まつりー!荷物置いたら四時集合ね!ご飯とカラオケ!」

「……あ、うん」

「あと連絡するから!」

「うん」

「まつり?聞いてた?」

後輩からもらった花束や色紙をバッグに詰めて、さっさと行こうとしていたら玲奈が目の前を立ちはだかった。

私が心ここに在らずなのを悟ってるあたり、さすが親友。
腕を組んで、なにやら疑っているような目を向けてくる。


「ちゃんと来る気ある?後半ほとんど遊んでないから、みんなまつり不足だからね?」

「分かってるって」

「ほんとかなぁ。……まつり、あっち見てみ」


おもむろに後ろを指さされて振り返ると、後輩生徒たちが塊になってこっちを見ている。

「……なにあれ」

「まつりと写真撮りたいんだって」

「もうこんなに色々もらったし十分だよ…」

バッグに入り切らなかった、よく知りもしない後輩たちからのプレゼントの数々。
私、特にあの子たちになにかしてあげた記憶なんてないんだけど。


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