雨暮くんは溺愛彼氏
 お父さんの運転する車で三時間弱。この時期だからやはり混雑しているし、酔い止めは持ってきて正解だった。
 敢えて、連絡先は聞いていない。
 聞くのは簡単で、やり取りをすれば、もっともっと、気持ちが膨らんでいくに決まっている。だけれど、わたしは、あなたからのお手紙を受け取った、あの感触を胸に抱き締めていたかった。宝物のようなこの気持ち。香りが消えるのが怖くて。でも、あなたから貰った大事な手紙は勿論持ってきた。
 すがすがしい空気。都会とは違う、お父さんのふるさと。山稜が町から見える、不思議な街。Youtubeとかで見るヨーロッパの動画みたいで。
 海がないこの町。お父さんが幼少期を過ごした大事な場所。
 じいじばあばのおうちに集まるのは、長期休暇の暗黙の約束事で。父が車を持っていない頃は電車を乗り継いで向かい、父がドライブに目覚めたいまとなっては父の運転で向かう。
 都会者でずっと都会で過ごしてきて、田舎がなんなのかを知らなかったわたしにとって大切な、第二のふるさと。車を降りると、ばあばが迎えに来てくれた。
「花桜里ちゃーん。いらっしゃいー。まーた、背が伸びたなぁ。」
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