彼の手『だけ』を見ていた私は、
予想外のことに驚けば、相変わらずの爽やかな笑みを向けられた。

「どちらへ?」
「コーヒーを淹れに行こうと思いまして」
「じゃあ、僕もご一緒していいかな?」

 まさかの提案にコクコクと頷いてしまう。
 長谷川さんは手だけでなく、その容姿や性格で大人気な存在。女性社員に限らず、気難しいと言われる常務からも好かれるほど人に好かれるほどである。そんな彼からの提案を断れるわけがなかった。

 コーヒーメーカーで淹れたコーヒーを片手に笑う長谷川さんのなんと輝かしいことか。
 紙コップを持つその手がまた目を引いて仕方ない。爪の形が綺麗な上に血管の出方も完璧である。2人きりだからあまり見てはいけないと分かりつつも、こんな至近距離で観察できる時もないため、ついつい目が惹きつけられてしまう。

「顔色、良くなったみたいで良かった」
「その節はありがとうございました。少し疲れていたみたいです…多分」
「うんうん。無理は禁物だよ。もし体調が悪かったら遠慮なく相談してね」

 なんて理想の上司だろう。
 再度お礼を伝えれば、彼は満足げに頷いた。
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