彼の手『だけ』を見ていた私は、
「おっと。そろそろ戻ろうか」
長谷川さんの言葉に時間を確認すれば、会議が再開する3分前。彼はコップに残ったコーヒーをクイッと飲むと、優しくコップをごみ箱に捨てた。
相変わらず手に視線を向けつつ、私も倣ってコーヒーを飲み切った。そのまま会議室に戻ろうとする長谷川さんに続こうとして、ふといつもの彼の習慣を見ていないことを思い出す。
「あの、」
「ん?」
「ネクタイ、緩めたままじゃないですか…?」
つい指摘をすれば、 長谷川さんは驚いたように目を見張った。そして苦笑しながら、再び自分の首元にあの美しい手を添えた。
「ああ、そうだった。教えてくれてありがとう」
鏡も見ずに、指先の感覚だけでネクタイの結び目をクッと上へ押し上げる長谷川さん。人差し指と中指で結び目を挟み、親指で形を整えるその仕草。さらには、白いシャツの襟元とそこに添えられた彼の少し日焼けした手のコントラストが信じられないほど綺麗で、官能的で。極めつけに親指で整えたネクタイを確認するように撫でるのだから、ごくりと息を呑んでしまった。
ネクタイを締め直す彼の指先に、言葉にできないほどの熱い視線を送ってしまっている自覚はあった。けれど、どうしても目を逸らすことができない。
「…よし、これで大丈夫かな」
長谷川さんはネクタイの形を綺麗に整え終えると、確認するように私を見つめた。その瞬間、私の熱い視線と彼の穏やかな瞳が真っ向からぶつかってしまった。
「あ、すみません! ぼんやりしちゃって!」
慌てて視線を逸らそうとした私に、長谷川さんはいつも通りの爽やかな笑みを浮かべた。だけど、彼は自分の首元にまだ手を添えたまま、ほんの少しだけ声を低くして、こう言った。
「そんなに見つめられるとなんだか照れるな」
その言葉に私は視線を外してしまった。それは彼の手を見るためではなく、照れや恥ずかしさからくる逃避だった。
長谷川さんの言葉に時間を確認すれば、会議が再開する3分前。彼はコップに残ったコーヒーをクイッと飲むと、優しくコップをごみ箱に捨てた。
相変わらず手に視線を向けつつ、私も倣ってコーヒーを飲み切った。そのまま会議室に戻ろうとする長谷川さんに続こうとして、ふといつもの彼の習慣を見ていないことを思い出す。
「あの、」
「ん?」
「ネクタイ、緩めたままじゃないですか…?」
つい指摘をすれば、 長谷川さんは驚いたように目を見張った。そして苦笑しながら、再び自分の首元にあの美しい手を添えた。
「ああ、そうだった。教えてくれてありがとう」
鏡も見ずに、指先の感覚だけでネクタイの結び目をクッと上へ押し上げる長谷川さん。人差し指と中指で結び目を挟み、親指で形を整えるその仕草。さらには、白いシャツの襟元とそこに添えられた彼の少し日焼けした手のコントラストが信じられないほど綺麗で、官能的で。極めつけに親指で整えたネクタイを確認するように撫でるのだから、ごくりと息を呑んでしまった。
ネクタイを締め直す彼の指先に、言葉にできないほどの熱い視線を送ってしまっている自覚はあった。けれど、どうしても目を逸らすことができない。
「…よし、これで大丈夫かな」
長谷川さんはネクタイの形を綺麗に整え終えると、確認するように私を見つめた。その瞬間、私の熱い視線と彼の穏やかな瞳が真っ向からぶつかってしまった。
「あ、すみません! ぼんやりしちゃって!」
慌てて視線を逸らそうとした私に、長谷川さんはいつも通りの爽やかな笑みを浮かべた。だけど、彼は自分の首元にまだ手を添えたまま、ほんの少しだけ声を低くして、こう言った。
「そんなに見つめられるとなんだか照れるな」
その言葉に私は視線を外してしまった。それは彼の手を見るためではなく、照れや恥ずかしさからくる逃避だった。