ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
奈々が取り繕うようにペコペコ頭を下げて『何でもありませーん』と説明すると、訝しげな顔をしながらも、みんな仕事に戻るけれど……
「あの」
一人が席を離れ、私たち3人に歩み寄ってきた。……柚木くんだ。
「上層部が完全吸収って言ってたんですか?」
「えっ? あ、あの……」
まさか無口な柚木くんがこんなふうに割り込んでくるとも思ってなかった雅絵は、しどろもどろだ。そんな雅絵を、柚木くんは険しい目で見据える。
「教えてください」
「はっ、はいっ。言ってましたっ」
「ちょ、柚木くん!」
制止の声をかけるも、柚木くんは無視して雅絵に問いを重ねる。
「向こうが一方的に話を変えてきた様子なんですね?」
「は、はい。そういう感じでした。人事課長、ピュアスプリングとしての経営はどうなるんだって、すごく焦ってて……」
その話を最後まで聞かずに、柚木くんは身をひるがえした。大股に歩いて自分の席に戻り、バッグを乱暴に掴む。
「すみません、今日はこれで早退します」
奈々を見てそれだけ言うと、ハンガーラックのコートを取って腕にさげた。
「あっ、柚木くん!」
ワンテンポ遅れて奈々が呼んだ時には、もうその姿は廊下の向こうへと消えていた……。