ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
柚木くんは黙っていた。けれどその頬がかすかに震えたのを、私は見逃さない。

「そうなのね? だから急にうちを辞めて、彼女の所に行くなんて──!」

「──提携の話は、予定通り進むよ。吸収合併なんかじゃない、あくまでグループ傘下に入るっていう元の形で」

「……!! 彼女と取引したのね!? まさか、吸収の話も最初からあなたを連れ戻すための手段だったの?」

「取引なんかしてないよ。俺が自分で決めたんだ。かなりいい条件で働かせてくれるっていうし」

「嘘! そんな嘘で納得するバカいないわよ!」

到底信用できるわけがなかった。悔しくて、全身が熱くて、視界がぼやける。

「……いいじゃん。美咲は困ることなんて何もないだろ。厄介な居候はいなくなるし、今まで通り仕事を続けられる」

レンズの奥の目をすがめて、困ったように微笑む。いつもそんなふうにしか笑えない彼が、本当に悲しい。

「ちっとも、よくなんかないっ……!」

目の前の白い顔を睨み上げると、柚木くんはおもむろにかけていた眼鏡を外した。

「そんな怖い顔しないで、笑っててよ。俺と過ごす最後の夜なんだから」

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