ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
「最後の夜はムリそうだな。さすがに冷静に過ごす自信がないよ」

自嘲的にそう言い、柚木くんは先ほど置いたバッグを再び手に取る。

「っ、どこ行くのよ?」

ぼうっとしていた頭が遅れて彼が出ていこうとしていると気づき、慌てて呼んだ。

「心配しなくても明日はちゃんと出勤するから。せめて最後の挨拶くらいは対面できっちりしないとね」

「違っ……そんなことを言ってるんじゃ……!」

そうじゃない。そんなことを心配してるんじゃない。

もっと叫んで引き止めたいのに、その声が彼を苦しめるともわかっているから出なくて。

「──だから、そんな顔しないで、美咲。困らせてばっかの俺が言っても説得力ないかもだけど、俺は美咲の笑ってる顔が好きなんだから」

「っ……この状況で、笑えるわけ……」

非常識なことばかりを吐いてきた口でそんなことを言うのもずるい。
いつもいつも、彼は反則ばかり。

油断するととめどなくあふれそうな涙を、私は必死で堪えていた。

そんな私にふっと吐息のような笑いをもらして、最後に柚木くんが言う。

「大好きな仕事、これからも頑張りなよ。いつまでも、人の心に触れる営業がしたいんだろ」

本当にずるい、優しさで満ちた言葉を残して。
迷惑なだけだったはずの同居人は、背中を向けると静かに部屋を出ていった──…。


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