ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
【14】ペットとしての、生き方 ~瞬也side~
部屋に入ってきた瞬也を、蘭子は満面の笑みで迎えた。
「おかえり。戻ってくるのは明日じゃなかったの?」
夜中でも綺麗にメイクを施した艶めいた唇が、嬉しそうにクッとあがる。
40代に入った蘭子だが、見た目はとてもそうは見えない。
仕事柄か天性かは不明だが、蘭子は知り合った頃と変わりなく、華麗で美しい大人の女だった。
そう──彼女が純粋に“親代わり”だった時間は、本当に短かった。今はもう到底、亡き母親と並べて見ることなどできない。
「早まっても問題はないでしょ。明日は出勤するし、荷物を持ってくるのもその後だけど」
美咲の所から身ひとつで出てきたから、今は通勤用のバッグ以外は何も持っていない。
とはいえ、蘭子の所に戻るのなら、必要な所持品など実際には特になかった。ずっと放浪の旅に付き合わせている、ファズだけだ。
「あなたの部屋、そのままよ。荷物なんていらないでしょ」
予想通りの言葉を吐き出しながら、蘭子が衣擦れの音を立てて近寄ってくる。
都内の高級マンションの一室。ここはリビングだが、美咲の部屋の三倍は広い。天井のシャンデリアの光が、蘭子の顔に妖艶な陰影を落としていた。