ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
だけどそれ以外、彼に話しかける人はいない。常に近寄りがたい雰囲気を発していた彼には、親しい人間は一人もいない。

柚木くんは「すみません」とだけ謝って、荷物を整理し始めた。

私は自席から動かない。

昨夜は一睡もできず、柚木くんの残していった言葉を頭の中で何度も反すうして考えた。
そして考えれば考えるほど、私が引き留めたところで何にもならないと感じた。

柚木くんは彼なりの動かない意志を持って決めたんだと思う。
私を見る瞳には、たしかに覚悟と優しさがあった。

──私には、止められない。

やがて荷造りを終えた柚木くんは、荷物を持って課長の元へ移動し、「終わりました」と告げる。

「ああ。手続き関係の書類は、後日人事課から郵送されるだろう。本当に残念だが……これからも、しっかりやれ」
「はい」

課長に頭を下げる柚木くん。顔を上げるとくるりと振り返り、オフィスに残った面々を見るともなく見渡してから、

「お疲れ様でした。失礼します」

そうして柚木くんは、紙袋とバッグを両手に提げて、オフィスを出ていった。
さすがにあっけないと思ったのか、奈々がツツッと移動し、課長に小声で話しかける。

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