ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
「課長。急いで餞別買って渡すとか、見送りくらいしてもよかったんじゃないですか?」
「そう言ったんだが、柚木がどちらもやめてくれって言ったんだよ」
「そうなんですか……うー、柚木くんなら言いそうだけど」

そう呟きながら、奈々は席に戻った。

──あっけないものだな。

社員たちは先ほどまでの時間なんてなかったかのように、普通に仕事している。

柚木くんも、ここにいるのが当然の人だったのに、もう彼の席はない。
こんなにも簡単に、日常は変わっていく。


胸を支配する苦さを懸命に隠して、私はその日も精一杯仕事をした。

疲労困憊で帰ってきた私を迎えたのは、綺麗に片付いた部屋。

柚木くんが使っていた布団はたたまれ、布団ケースに入れてある。段ボールと古い毛布で作ったファズの寝床も、跡形もなく片付けられていた。寝床の主も、当然いない。

テーブルやソファの上に置いてあった柚木くんの私物も、もうどこにもない。

ただ、テーブルに小さなメモ紙が1枚置かれていた。
手に取って見ると、短く『鍵はポストの中』とだけ書かれている。

別れの言葉すらない、無機質な手紙。

「……これだけ?」

本当に、こんなにもあっさりなんだ?

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