ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
【16】過去との、戦い方

柚木くんがいなくなっても、オフィスの日常に変化はない。

うちがホワイト・マリッジに吸収されるという話も、上層部から告げられる気配はいっこうになかった。きっと吸収の話はなくなったんだろう。

聞かなくても、私にはそれがわかっていた。

この会社の誰ひとりそれを知ることはないけれど、彼はやっぱり、この会社を救ったんだ。
だから私達は今日も、平和に営業を続けている。


そんな日々を一週間ほど繰り返した頃。私は奈々に、拓巳と別れたことを話した。

拓巳との別れは必然的に柚木くんを思い出すことに繋がり、彼の存在に振り回されている間も、彼がいなくなってからも話せなかった。

だけど一週間経って、心も少しだけ落ち着きを取り出した。だからとりあえず、拓巳のことだけは、話しておこうと思ったのだ。

私から飲みに誘った居酒屋で突然聞かされた奈々は、こぼれんばかりに目を真ん丸にして、

「えっ、なんでっ!? もしかして、私が倦怠期じゃないかなんて言ったから!?」
「違うよ。奈々は無関係だから心配しないで。そうじゃなくて……」
「じゃ、どうしてよ?」
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