ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
いつの間にか、私達の間に距離はほとんどなかった。
知らぬ間に、互いに歩み寄っていたみたいだ。

手を伸ばせば触れられる近い距離に、柚木くんの顔がある。眼鏡で隠していない裸の瞳に、私が映っていた。

「──これが、私の気持ちよ。正真正銘の」

柚木くんと関わるまでの私は、日常という緩慢な平和の中にどっぷり浸かっていた。
昔はそんなこと思ってもいなかったのに、いつしか変わらないこと、何も起こらないことが幸せだと、勝手に思い込んでしまっていた。

それは違うと教えてくれたのは、柚木くんだ。

柚木くんがくれたきっかけがなければ、私は今も拓巳の浮気に気づくことなく、代わり映えのない毎日を送っていただろう。

でももう、私はそんな日々を求めない。苦しくても大変でも、本当に幸せになるための道を歩く。

27歳にして、人生の大勝負。
それもいいじゃないかと、今は本気で思っている。

柚木くんが一緒なら、きっとそれは苦しいだけの道じゃないはずだから。

「……一緒に行こうよ。あなたの家は、ここじゃないよ」

柚木くんの瞳を見上げて、ゆっくりと紡いだ言葉。
その言葉に、ようやく柚木くんの頑なな心が緩んだのがわかった。

私を見下ろす目が優しく細められ、唇には雪解けのような微笑みが広がっていったから。


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