ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~

「どういうつもりよ、こんなこと……!」

「したくなったからしました」

「はぁっ!? したくなったからってしていいもんじゃないでしょ!?」

「ですね。里中さん、彼氏いるし」

えっ? それも知ってたうえでやったの!?

「彼氏に怒られます? うまくいってないんだったら大丈夫かな」

「──! な、なに言って……」

不本意にも、数日前に奈々とした話を思い出してしまった。
奈々が、私と拓巳の関係を倦怠期だと評した件。

──違う違う、あれは勝手に奈々がそう言っただけで。
私は拓巳とうまくいってないとも、倦怠期だとも思ってない。

だけど、そんなことを柚木くんに話す必要もない。

こんな、彼氏持ちとわかってる上司に、いきなりキスしてくるヤツに。

──帰ろう。今はとても、冷静に話せる心情じゃない。

バッグを引っつかみ、壁際のハンガーラックからコートを取った。

「もう二度と、こんなことしないでよ」

「…………」

柚木くんは黙って私を見ている。
黒い瞳が何かを言いたそうに揺れていたけれど、私は目をそらした。

そしてそのまま、彼を見ることなくオフィスを飛び出した──。

< 22 / 175 >

この作品をシェア

pagetop