ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
「どういうつもりよ、こんなこと……!」
「したくなったからしました」
「はぁっ!? したくなったからってしていいもんじゃないでしょ!?」
「ですね。里中さん、彼氏いるし」
えっ? それも知ってたうえでやったの!?
「彼氏に怒られます? うまくいってないんだったら大丈夫かな」
「──! な、なに言って……」
不本意にも、数日前に奈々とした話を思い出してしまった。
奈々が、私と拓巳の関係を倦怠期だと評した件。
──違う違う、あれは勝手に奈々がそう言っただけで。
私は拓巳とうまくいってないとも、倦怠期だとも思ってない。
だけど、そんなことを柚木くんに話す必要もない。
こんな、彼氏持ちとわかってる上司に、いきなりキスしてくるヤツに。
──帰ろう。今はとても、冷静に話せる心情じゃない。
バッグを引っつかみ、壁際のハンガーラックからコートを取った。
「もう二度と、こんなことしないでよ」
「…………」
柚木くんは黙って私を見ている。
黒い瞳が何かを言いたそうに揺れていたけれど、私は目をそらした。
そしてそのまま、彼を見ることなくオフィスを飛び出した──。