ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
誰かが入ってきたからって顔をあげることもない。
直接間近で挨拶されない限り見向きもしないのは、いつものことだ。
でも今日は、その態度がやたら気に障る。
昨日ダテだと判明した眼鏡も、今日はまた当然のようにかけて、いつもと同じ顔で。
昨日のことなんて忘れたかのように。
「柚木くん」
私が歩み寄ると、彼は黙ってこちらを見た。
その顔に、私は精一杯の平板な声で尋ねる。
「昨日、報告書はどうした?」
「もう課長に提出しました」
「そ、そう、ありがとう。……先に帰ってごめんね」
「なになに、どーした? 昨日、なんかあったの?」
会話を聞いてたらしく、奈々が話に入ってくる。
「なんでもな──」
とっさにごまかしかけたけど、考えてみればお客様と揉めたことは報告しておかないといけない。柚木くんの本当の上司は奈々なんだから。
「……あっちで話すわ。行こう、奈々」
オフィスに隣接した小さなミーティングルームを指で示して、私は奈々の方に近寄った。
柚木くんの顔は見ないように、背中を向けて。
直接間近で挨拶されない限り見向きもしないのは、いつものことだ。
でも今日は、その態度がやたら気に障る。
昨日ダテだと判明した眼鏡も、今日はまた当然のようにかけて、いつもと同じ顔で。
昨日のことなんて忘れたかのように。
「柚木くん」
私が歩み寄ると、彼は黙ってこちらを見た。
その顔に、私は精一杯の平板な声で尋ねる。
「昨日、報告書はどうした?」
「もう課長に提出しました」
「そ、そう、ありがとう。……先に帰ってごめんね」
「なになに、どーした? 昨日、なんかあったの?」
会話を聞いてたらしく、奈々が話に入ってくる。
「なんでもな──」
とっさにごまかしかけたけど、考えてみればお客様と揉めたことは報告しておかないといけない。柚木くんの本当の上司は奈々なんだから。
「……あっちで話すわ。行こう、奈々」
オフィスに隣接した小さなミーティングルームを指で示して、私は奈々の方に近寄った。
柚木くんの顔は見ないように、背中を向けて。