ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
〇●
「あの柚木くんがねー。ホントびっくりだわ」
──昼休み。
会社近くのカフェでランチを食べながら、奈々が言う。
朝のうちに、事の顛末は簡潔に説明した。
その後起こったことはまだ私も混乱してて、言っていないけれど。
当然のごとく奈々は信じられないって顔で驚いて、今もまたこうして繰り返してる。
普段の柚木くんを考えれば、至極頷ける反応だ。
だけど……彼は、これまで私たちが思っていたような人じゃなかったのかもしれない。
本当の顔は、もっと他にあるのかもしれない。
昨夜の出来事を思い起こせば、そう感じずにはいられなかった。
「どうしたの? なんか今日、全然元気ないじゃん。その件で落ち込んでんの?」
返事のない私を訝しんで、正面の奈々が身を乗り出してくる。
「そ、そんなことないわよ。っていうか私が落ち込むようなことじゃないじゃん」
慌ててごまかして、ストローでアイスティをゴクリと飲む。
そうだ、昨日のことで私が調子を崩すなんておかしい。理不尽だ。
──もう忘れよう。柚木くんだって、何事もなかったように素知らぬ顔をしていた。
彼がなぜいきなりキスしてきたのか、私には知りようもない。