ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
ポンポンと私の肩を叩き、奈々はエレベーターホールへと歩き出す。
気をきかせてくれたらしい。

『……美咲? どうしたんだよ』

「あ、ゴメン。友達と飲み行こうかって話もあったんだけど、なくなった。だから大丈夫よ」

ここは素直に奈々の厚意に甘えて、私は拓巳にそう告げた。

……実際、会えるなら拓巳に一番会いたい。
そうすればきっと、どうでもいいこととか、スパッと忘れられる。

『そっか。それじゃあまた、俺がそっち向かっとくよ。7時半くらいでいい?』

「うん、いいよ。私も終わったら電話する」

『ああ。んじゃ夜にな」

通話が切れたことを確認してから、スマホを下ろしてバッグにしまう。
まだ時間に余裕はあるけど、少し急ぎ足で歩き出そうとした、その時だった。

「彼氏さん、拓巳っていうんですね」

突如、真後ろから聞こえてきた声。
私はギクリと体を硬直させた。

「柚木くん……」

振り返ると、柚木くんはレンズの奥の瞳を少し細めて、じっと私を見ている。

「デートの約束ですか?」

平淡な声。
でもその声にこれまでとは違う響きがあるのを、私は敏感に察した。

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