ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
──わかる。敬語を使ってるけど、これはいつもの“柚木くん”じゃない。

なかったことにする気なのかと思っていたのに、どうしてまたこんなふうに声をかけてくるんだろう。
わからないけど……とにかく、関わらない方がいい。

「あなたに関係ないわ」

振り切って立ち去ろうとした私を、だけど柚木くんは引き止めた。

「彼氏さんのこと、好きなんですか」

「は……?」

一瞬ぽかんとした後で、ぐっと自分の眉間にしわが寄るのがわかる。

「好きに決まってるじゃない」

聞くまでもない。彼氏なんだから。

「本当に?」
「っ、当たり前でしょ! なんなのよ、昨日から!」

もう余裕など吹き飛んでしまい、声を荒げた。
けれど柚木くんの方は表情を変えることもなく、

「だって里中さん、楽しそうに見えないから」

「………!? 決めつけないで! 私のことなんかよく知らないでしょ、あなた」

「……どうだろ。里中さんが思ってるよりは、知ってると思います」

答えながら、柚木くんはレンズ越しの目を細める。
まるで、何か眩しいものでも見つめるように。

そして私が言い返すより先にスッと横を通り過ぎると、エレベーターへと歩いていく。
思惑のまったく見えない背中を、私は呆然と見送った……。


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