ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
ふいに柚木くんが肩を寄せてきて、私はビクッと飛び上がった。
体を引こうとしたけど、彼は素早く私の腕を掴んでそれを阻むと、

「俺がキスした理由も、考えて」

耳に息を吹き込むように囁かれ、私は力一杯彼の手を振り払った。

「離して!」

転げ落ちるように高い椅子から降り、下のカゴに入れていた荷物を掴む。

「マスター、これっ」

代金をカウンターに置くと、柚木くんの「待って」という制止の声も聞かず、一目散に店を飛び出した。

大通りに出て、つかまえたタクシーの中で拓巳に電話する。
でも、留守電になって応答はなかった。

時刻は9時前。もしかしたらまだ残業してるかもしれないけど、帰宅中だってことも充分有り得る。

メールをしておいて、家に上がらせてもらって待っていよう。
お互い合い鍵は持ってる。私の部屋より使用頻度は少なくても、勝手知ったる彼氏の部屋だ。

──昨日ちゃんと拓巳に抱かれていれば、きっとこんなことにはならなかった。柚木くんの言葉に動揺することなんてなかった。

くだらないことを思い出して、迷った私が馬鹿だったんだ。今からでもやり直せるならやり直そう。
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