ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
でも柚木くんはうちの社長にだって態度を変えない。私の知る営業スマイルはお客様に対してだけだ。
──どうして。
胸の中で、ざわざわと何かが揺らめいた。
雨の前の暗い草原で風に揺らされる草のように、心が落ち着きなく乱れる。
「あ……」
エレベーターから少し歩いた位置で立ち尽くしたまま見ていたら、柚木くんが立ち上がった。
そのままツカツカと壁際まで歩き、社長も立って彼を追いかける。
……二人ともが、私に背を向け話している。
「……」
どうしよう。こんなこと、本当はよくないとわかっている。
でも、気になった。
──少しだけ。
内心で言い訳し、そっと足を踏み出す。ゆっくりと談話スペースに近づいた。
周囲には休憩や待ち合わせで他にも数人の人がいる。
彼らの陰に隠れながら、少しずつ、柚木くん達の声が漏れ聞こえる距離にまで──…。
「──からそれは、蘭子さんの思い込みだって」
珍しく柚木くんが大きな声を出したので、まだ距離は開いているけれど、その部分だけはっきり聞こえた。
“蘭子さん”。聞き覚えのない名前だ。
──どうして。
胸の中で、ざわざわと何かが揺らめいた。
雨の前の暗い草原で風に揺らされる草のように、心が落ち着きなく乱れる。
「あ……」
エレベーターから少し歩いた位置で立ち尽くしたまま見ていたら、柚木くんが立ち上がった。
そのままツカツカと壁際まで歩き、社長も立って彼を追いかける。
……二人ともが、私に背を向け話している。
「……」
どうしよう。こんなこと、本当はよくないとわかっている。
でも、気になった。
──少しだけ。
内心で言い訳し、そっと足を踏み出す。ゆっくりと談話スペースに近づいた。
周囲には休憩や待ち合わせで他にも数人の人がいる。
彼らの陰に隠れながら、少しずつ、柚木くん達の声が漏れ聞こえる距離にまで──…。
「──からそれは、蘭子さんの思い込みだって」
珍しく柚木くんが大きな声を出したので、まだ距離は開いているけれど、その部分だけはっきり聞こえた。
“蘭子さん”。聞き覚えのない名前だ。