ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
「まだ俺が小さかったから、母親は仕事を変えた。運送業じゃ一晩中帰ってこれないことも多いけど、もう俺を預ける先がないから。幸い少しの財産と家を残してもらえたから、昼の仕事を始めたんだけど──やっぱり年々、生活は厳しくなっていったかな」
そこまで話した時、どこか遠いところをさ迷っていた柚木くんの視線がこちらに向く。自嘲めいた笑みを浮かべて、彼は話を続けた。
「母親が蘭子さんに会ったのは、そんな時だよ。俺が小6になってすぐの頃だった」
「えっ……」
“蘭子さん”の名前にピクリと頬が震えてしまった。
『蘭子さんが親代わり』の言葉が繋がり、私は知らず知らずのうちに、ギュッと両の拳に力を入れる。
「元々母親と蘭子さんは、学生時代の知り合いだった。蘭子さんは母親の1つ下で、母親がチームに所属してヤンチャしてた時に、妹分みたいに面倒見てた後輩だったんだ」
同じようにヤンチャをしていた二人。けれど10年以上も経って偶然再会すると、環境は全く違っていたのだと柚木くんは話した。
かたや、毎日ギリギリの生活を送るシングルマザー。ところがもう片方は真っ当な道を歩み始めると、ビジネスの才能を開花させ、個人事務所の経営者になったのだという。