聖女らしいですが、皇太子殿下と結婚とか無理ですから!
 ということは、ここにいるのは皇太子の偽物? と考えたものの、「それは少し違う」と言われる。

「わたしは第三王女のエメリーよ。今世ではね。ふふっ。昔からそのとぼけたところは変わらないのね、殿下」

 殿下は貴女でしょうと言いたいけれど、この少し癖のある呼び方は覚えがあった。

「まさか、ロクサーナか?」
「あたり! 会いたかったわ、あなた」

 再び抱きつかれ呆然とする俺の周りに、やんやとはやし立てる姉たちが現れる。
 意味が分からずきょろきょろする俺に、ブレアが「落ち着きなさい」と呆れたように言った。
 いや、無理だろ!

「エメリー王女は、約束通り、あんたのそばに戻ってきた。それだけのことよ」

「いやいやいや。それだけって」

「それだけなの。難しく考えるな、フィンリーのくせに」

「くっ」

 末っ子のさがで、姉たちにビシッと言われると逆らえん。
 それでも頭の奥にいた昔の俺が、そろりと頭をもたげた。

 かつて皇太子だった俺と、その妻だったロクサーナ。
 彼女は死の直前、俺に聖女の力を分け与えたことを思い出す。だから俺にも聖女の力が使えて――――って

「ちょっと待て。まさかと思うけど、姉ちゃんたち、知ってたのか?」

 じろりとねめつけても、まるで怖くないとばかりに流されたが、それで確信した。俺はかつがれたんだ。

 よく考えればそうだろ?
 皇太子の嫁になれないなんて、俺が男の姿でいれば一発で通じたことじゃないか。
 当たり前みたいに女装させられたけど、あれもこれもみーんな、姉ちゃんたちに遊ばれたんだと、遅まきながら気づいた。

「みんなひでぇ」
「なぁに言ってるんだい。あんたが鈍いだけよ」

 母さん、そんないい笑顔で追い打ちかけないでくれ。
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