愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく

(薄情女、寂しかったのは俺だけか?)

しばらくして

(わたしも)

嬉しくて、肩を揺らし口元を緩めていたら、冷ややかな視線が投げられる。

小さく咳をして、菜穂と席を交代しろと指を振り示した。

菜穂の隣は、こいつが長年片思い中の彼女だから、断る事はしないはず。

「相澤さん、悪いけど、席を変わってくれないか?」

「どうしてですか?」

「…清水と少し打ち合わせがある」

仕事はできるくせに、恋愛ごとになると不器用で、つまらない理由でしか彼女に近寄れない。

まぁ、俺も似たようなものなのかもしれない。
菜穂のことになると、上手くいかないのだから…

窓を眺めているふりをして、彼女が隣に座った気配を感じる。

会いたかった…
できる事なら、今すぐ抱きしめて、その唇にキスをして、愛を囁きたい。

それができないもどかしさを、菜穂の手を握り、指を絡めることで愛を示した。

驚き顔の菜穂が、周囲を気にして慌てふためいていたが、手を振り払う気はないようだ。

シーと、口元で指を立て、静かにしてろと笑うと、顔を赤らめながら、コクリと頷き、恥ずかしさからか、うつむいてしまった菜穂。

俺は窓に映る菜穂を見つめ続けていく。
< 119 / 146 >

この作品をシェア

pagetop