愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく

店長の鷹宮さんには呆れた表情で「皆に示しがつかないぞ」と小言を言われているが、蓮のスルースキルは鉄壁のようだ。

「菜穂、後で俺の部屋に来るよな⁈」

「えっ、行かないよ」

「はぁ?俺との約束忘れたのか?」

「えー、何か約束した?」

「去年、俺のお願い聞くって約束だよ」

そんな去年の約束なんて記憶に残っていない。

「そうだった?」

「ハァー、もういい。俺との約束なんて守る気なかったんだよな」

拗ねて、投げやりになってそっぽを向いてしまった蓮に、「わかったから、行くから」と、つい、言ってしまった。

その時の蓮の表情を見たのは、隣にいた店長だけ。

あーぁと言うように私を見ていた。

皆が温泉を満喫している時間、私は、蓮が予約した離れ部屋で、なぜか記憶にある浴衣を着せられている。

「これ…見覚えがあるんだけど」

「去年着ていた浴衣だな。似合ってたから、買い取った」

これだから、金持ちは…と呆れるが、今の現状を思い出す。

「どうして?」

「どうしてだと思う?」

悩ましい手つきで浴衣の襟を指でなぞっている。

「俺のお願い聞くだろ?」

「聞くけど…嫌な予感しかしない」

「正解。浴衣を着た菜穂とやりたい」
< 145 / 146 >

この作品をシェア

pagetop